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33話-2 花嫁の誓い。

last update Huling Na-update: 2025-07-20 20:01:00

「ご主人さま?」

「少し、寝て休め」

どうやら、もうじきエルバートの正式な花嫁になれるという余韻に浸り、その気持ちの高まりで眠ることが出来なかったことを見透かされていたよう。

フェリシアは客間でエルバートに頭を優しく撫でられながら微睡んだのだった。

* * *

その後、エルバートは執務室で机の椅子に座り山積みの書類に目を通しつつフェリシアのことを考える。

先程、フェリシアは多少休めたようだが、これから2ヶ月、婚姻の式の件で多忙を極めることになる。大丈夫だろうか。

彼女は無理をして頑張りすぎるところがあるから心配だ。

(私がしっかり支えねば)

「エルバート」

アベルに声を掛けられ、ハッとする。

アベルだけではなく、カイとシルヴィオもおり、いつの間にか書類を持って中に入って来ていたようだ。

「軍師長、指輪が決まったとさっきディアム様から聞きましたけど、全く執務に集中出来てないみたいですねー笑」

「2か月で結婚式準備とか前代未聞だな。やはり冷酷な鬼神」

カイに続き、シルヴィオが嫌味を発し、エルバートは冷ややかな殺気を放つ。

するとその脅威な殺気でふたりは黙り込み、書類をさっと机に置いてすぐさま出て行った。

* * *

そして結婚指輪の宝石選びの翌日も慌ただしさは続く。

フェリシアは昨日の午後に引き続き、今日も婚姻の式で着るドレスの布地やデザイン画、装飾品、差し出される様々な高貴なドレスの試着をまるで着せ替え人形のように強いられる。

更に午後になった今は落ち着く暇もなく、執務室でエルバートと共に招待状の手紙を書いたり、サインをしたりしている。けれど。

(身内であるものの、ローゼ伯母さまだけ、招待状を書くことがどうしても出来ない)

「フェリシア、手が止まっているがどうした?」

エルバートがソファーに座ったまま、隣から声をかけてきた。

「ローゼ伯母さまへの招待状のことなのですが……」

「私は出さなくて良いと言ったはずだが、それでも出すつもりなのか?」

「いえ、招待状を書くことがどうしても出来なくて&
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